法人に自分の土地を貸すときに提出する「土地の無償返還に関する届出書」

法人税

社長が自分の土地を、自分の法人に貸すというのはよくある話です。ところが税務上は、これだけで法人側に税金がかかることがあります。

土地を借りて建物を建てると、借りた側(法人側)には借地権が発生します。第三者同士であれば、この権利の代金として権利金を支払う慣行のある地域があります。しかし身内の間では、そうしたやり取りをしないことがほとんどです。すると税務署は、会社が権利金に相当する利益を無償で受け取ったとみて課税する場合があります。これを権利金の認定課税といいます。お金は一円も動いていないのに、会社の利益だけが増える扱いです。

将来タダで返しますと約束しておく

この課税を避けるための取扱いが、法人税基本通達13-1-7(権利金の認定見合せ)です。

法人が借地権の設定等により他人に土地を使用させた場合(権利金を収受した場合又は特別の経済的な利益を受けた場合を除く。)において、これにより収受する地代の額が13-1-2《使用の対価としての相当の地代》に定める相当の地代の額に満たないとき(13-1-5《通常権利金を授受しない土地の使用》の取扱いの適用があるときを除く。)であっても、その借地権の設定等に係る契約書において将来借地人等がその土地を無償で返還することが定められており、かつ、その旨を借地人等との連名の書面により遅滞なく当該法人の納税地の所轄税務署長(国税局の調査課所管法人にあっては、所轄国税局長。以下13-1-14までにおいて同じ。)に届け出たときは、13-1-3《相当の地代に満たない地代を収受している場合の権利金の認定》にかかわらず、当該借地権の設定等をした日の属する事業年度以後の各事業年度において、13-1-2に準じて計算した相当の地代の額から実際に収受している地代の額を控除した金額に相当する金額を借地人等に対して贈与したものとして取り扱うものとする。
 使用貸借契約により他人に土地を使用させた場合(13-1-5の取扱いの適用がある場合を除く。)についても、同様とする。(昭55年直法2-15「三十一」により追加、平15年課法2-7「四十八」、令4年課法2-14「五十一」により改正)

(注) 本文の取扱いを適用する場合における相当の地代の額は、おおむね3年以下の期間ごとにその見直しを行うものとする。この場合において、13-1-2の(注)1中「その借地権の設定等の時」とあるのは「当該事業年度開始の時」と読み替えるものとする。

やることは単純で、契約書に将来その土地を無償で返すと定めておく。そのうえで、貸主と借主の連名の書面で、遅滞なく税務署長に届け出る。これで権利金の認定は行われません。この書面が「土地の無償返還に関する届出書」です。

C1-63 土地の無償返還に関する届出|国税庁

理屈としては、返すときに権利金も立退料も請求しない約束なので、その借地権には財産としての価値が無いという整理になります。価値のないものを受け取っても、利益は生じません。

提出先と時期に気をつける

提出先は、土地の所有者の納税地を所轄する税務署です。借りる側ではありません。契約書の写しなどを添えて提出します。

期限は「遅滞なく」としか定められていません。実務では、契約した事業年度の申告期限までが一つの目安とされています。遅れて提出しても受け付けられることは多いようですが、後から出した届出の効力が争われた事例もあります。何十年も先に効いてくる書類なのに、控えが行方不明になりやすいので注意が必要です。税務署に対しても閲覧申請が多かった書類です。

相続のときに効いてくる

この届出には、もう一つの面があります。地主に相続が起きたときの土地の評価です。

一般に、届出書を提出したうえで賃貸借として地代を受け取っている土地は、更地としての評価額の80%で評価されます。残る20%は、借りている会社の株式の評価に反映される扱いです。同族会社であれば、結局は身内の中で行き来する話になります。

ただし、地代を取らずに無償で貸している場合は、この80%の扱いになりません。更地と同じ評価です。届出書を出したかどうかだけでなく、地代を受け取っているかどうかでも結果が変わります。

消えるのは権利金の話だけ

この届出書が止めるのは、あくまで権利金についての課税です。地代の話まで消えるわけではありません。

通達には、相当の地代に満たない地代しか受け取っていない場合、その差額を借主に贈与したものとして取り扱う、という趣旨も書かれています。その先の扱いは、貸主が個人か法人かで変わります。貸主が法人である場合には、差額が寄附金などとして問題になり得ます。届出書を出したから地代はいくらでもよい、という話ではありませんのでその点も注意が必要です。

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