味噌会社の高額役員報酬事件から考える法人税法34条

法人税

京都の味噌会社をめぐる役員報酬の事件が話題になりました。

会社が社長やその親族役員に高額な役員報酬を支払い、会社はその金額を経費として法人税の申告をしました。

これに対して国税側は、その一部を「不相当に高額」と判断しました。

不相当に高額とは、会社の経費として認めるには高すぎる、という意味です。法人税では、役員報酬は一定の条件を満たせば経費になります。ただし、金額があまりに高い部分については、会社の経費にできないことがあります。

この事件では、数年間で支払われた役員報酬のうち、大きな金額が経費として認められませんでした。その結果、会社側に追加の法人税が課されました。

会社側はこれを不服として裁判で争いました。しかし、地裁、高裁で会社側の主張は認められませんでした。最高裁でも上告が退けられ、国税側の処分が確定したとされています。

会社が決めた報酬でも税務上は別問題になる

会社法の感覚では、役員報酬は株主総会などの手続きを踏んで決めるものです。

では、会社として正しく決めた報酬なら、税務上も当然に全額が経費になるのでしょうか。

ここが今回の事件の大事な点です。

税務上は、会社内部の手続きだけでは足りません。実際の職務内容、会社の収益、同業同規模の会社との比較、役員の貢献度などを見て、経費として認める金額が判断されます。

つまり、会社が「この人にこれだけ払う」と決める自由はあります。しかし、その全額を法人税の計算上の経費にできるかは別問題です。

この根拠になるのが、法人税法34条です。

法人税法34条は、役員給与のうち一定のものだけを経費として認める、という考え方を置いています。役員給与は、会社の利益を役員側へ移す手段にもなり得るためです。

特に同族会社では、会社と役員の距離が近くなります。社長が株主であり、役員報酬を決める立場でもあることが多いです。そのため、利益を役員報酬に付け替えて法人税を減らすことができてしまいます。

法人税法34条が高額な役員報酬に制限を置いているのは、このような利益調整を防ぐためです。

「法人税法34条はおかしくないか」と問うた意義

今回、会社側は最終的には敗れました。

ただし、この事件を単に「高額な役員報酬が否認された事例」とだけ見るのは、少しもったいない気がします。

私が大きいと思うのは、会社側が「法人税法34条のあり方自体に問題があるのではないか」と投げかけ、最後まで争った点です。

役員報酬は、本来、会社の経営判断とかなり近いところにあります。

誰に、いくら払うのか。
その人の貢献をどう評価するのか。
将来の経営リスクをどう見るのか。
創業者や経営者の働きにどれほどの価値を認めるのか。

これらは、外から簡単に測れるものではありません。

もちろん、税務上の制限が必要な場面はあります。会社と役員が実質的に一体であれば、何でも経費にできるとするわけにはいきません。

一方で、「不相当に高額」という判断は、かなり評価の余地が残ります。納税者側から見ると、どこまでなら安全で、どこからが危ないのかを事前に読み切ることは簡単ではありません。

その意味で、法人税法34条は本当に今の形でよいのか。
経営判断に税法がどこまで踏み込むべきなのか。
判断基準は十分に明確なのか。

この問いを裁判で正面から出したことには、大きな意味があったと思います。

結果として負けたとしても、制度の違和感を言語化して争う人がいなければ、論点は表に出ません。そこは非常に重要です。

最高裁で新しい基準は示されなかった

この事件で注目されたのは、最高裁がどこまで判断を示すかでした。

役員報酬が「高すぎる」と言える基準は、実務上かなり難しい問題です。売上や利益だけで割り切れるものではありません。

強い経営者が会社の価値を大きく高めた場合、その人に高額な報酬を払うこと自体は、経済的には不自然とは限りません。

一方で、税務署側から見れば、会社の利益に比べて極端に高い報酬が支払われていれば、法人税を減らすための支出ではないかと見ます。

今回、最高裁が新しい明確な基準を示せば、今後の実務にも影響がありました。しかし、実際には最高裁で新しい判断が詳しく示されたわけではありません。

そのため、現場感覚としては、従来どおり「総合的に見て不自然でないか」を慎重に見るしかありません。

否認されるべき事案があることは理解できます。ただ、どこから先が危ないのかを納税者側が事前に読み切るのは簡単ではありません。

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