負担は変わらないと説明される防衛増税で、実際に変わったもの

所得税

防衛費の財源として、法人向けの防衛特別法人税と、個人向けの防衛特別所得税があります。前者はすでに始まっており、後者は2027年1月からです。

法人には上乗せが始まっています

防衛特別法人税は令和7年度税制改正で創設され、令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。暦年ではなく事業年度で切り替わります。

計算式は「(基準法人税額 − 年500万円)× 4%」です。基準法人税額とは、税額控除を適用する前の法人税額をいいます。控除前が基準になるため、賃上げ促進税制などで法人税の納付額がゼロになっていても、控除前の税額が500万円を超えていればかかります。

中小法人の軽減税率も踏まえると、課税所得がおおむね2,400万円程度までは基礎控除の枠に収まり、税額はゼロです。ただし税額がゼロでも申告書の提出は必要です。

法人側には「負担は変わりません」という説明が存在せず、素直な増税として設計されています。

個人は2027年1月から。ただし内訳の入れ替えです

防衛特別所得税は令和8年度税制改正で創設され、令和9年(2027年)1月1日以後に生ずる所得から適用されます。税率は所得税額の1%です。所得金額の1%ではありません。

同時に、復興特別所得税の税率が2.1%から1.1%に下がります。合計すると2.1%で、改正前と同じです。したがって、源泉徴収の実務でよく見る15.315%や20.315%といった税率も据え置かれます。

「所得税額が15万円なら、その1%で年1,500円の負担増」という説明は正しくありません。1,500円は防衛分の内訳であって、増加額ではないからです。改正前は復興分だけで3,150円、改正後は防衛分1,500円と復興分1,650円で合計3,150円です。差引きはゼロになります。

変わったのは税率ではなく、払う年数

変わったのは期間のほうです。復興特別所得税の課税期間が、令和19年(2037年)末までから令和29年(2047年)末までへ、10年延長されました。復興財源に回るはずだった1%分を防衛に振り向けるため、減る分を後ろの10年で埋める設計です。

時系列に並べると、2027年から2037年までは合計2.1%で改正前と同じです。2038年から2047年までは、改正前ならゼロだったはずの付加税が2.1%かかります。2048年以降は復興分が終わり、防衛分1%が残ります。

つまり増えているのは税率ではなく、払い続ける年数です。今年の手取りの話ではなく、生涯で払う総額の話に置き換わっています。

私はこの設計を最初に見たとき、よくできていると思う一方で、「負担は変わりません」の一言で片づけるのは説明として足りないと感じました。言っていること自体は正しいのに、聞いた人が受け取る印象と中身がずれるからです。

「当分の間」という言葉の実績

防衛特別所得税の課税期間は「令和9年以後の当分の間」とされています。終わりの年が決まっていません。

過去の例として、ガソリンの暫定税率があります。1974年に導入され、廃止されたのは2025年12月31日です。約50年かかっています。

防衛特別所得税が同じ経過をたどるかはわかりませんが、一般に終期を書かない負担は終わりにくい傾向があります。

実務で必要になるのは、切り替え作業

給与計算の現場に大きな変更はありません。合計2.1%が維持されるため、源泉徴収の流れは従来どおりです。必要なのは、令和9年分の源泉徴収税額表への切り替えと、給与計算ソフトの対応確認です。国税庁は令和8年5月に、源泉徴収のあらましとQ&Aを公表しています。

手間としては軽い改正にはなりますが、年数が延びたことによる増税という構造は知っておいていいかなと思っています。

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