国税庁が公表した、飲食料品に係る2年間の消費税率引下げのQ&Aには、届出に関する特例がいくつか載っています。この記事では、問3-2と問3-5を取り上げます。いずれも法案が成立した場合の内容で、現時点で確定したものではありません。
2つの特例に共通するのは、ふだんは期が始まる前に決めておく選択を、期の途中で決められるようにした点です。その結果、使い方によっては対象がかなり広くなる構図になっています。
問3-2 免税事業者も期の途中で課税事業者を選べる
免税事業者は、消費税を納めなくてよい代わりに、還付も受けられません。還付を受けるには、課税事業者を選択する必要があります。
そのための「消費税課税事業者選択届出書」は、原則として、課税事業者になりたい課税期間が始まる前日までに出します。個人事業者が令和9年分から課税事業者になるなら、令和8年12月31日までです。
特例では、飲食料品の販売を行う免税事業者は、令和9年4月1日の属する課税期間中に届出書を出せば、その期から課税事業者になれます。個人事業者なら、令和9年中に出せばよいことになります。問3-5と同じく、届出書の「参考事項」欄には「飲食料品特例」と記載します。
ただし、課税事業者を選んだら原則2年間は続けるという決まりは、そのまま残ります。また、個人事業者の場合は令和9年1月から課税事業者となるため、1月から3月までの飲食料品の売上には8%が適用されます。
問3-5 簡易課税の2年縛りが外れる
簡易課税をやめる届出の特例(問3-5)は、前回の記事で取り上げました。届出の期限が申告期限ではなく課税期間中であることなど、手続きの注意点はそちらにまとめています。

この記事で取り上げたいのは、同じ問3-5にある2年縛りの扱いです。
簡易課税を選ぶと、原則として2年間は続けて適用しなければなりません。いわゆる2年縛りです。特例では、飲食料品の販売を行う簡易課税事業者について、令和9年4月1日の属する課税期間はこの2年縛りが適用されません。
1年で簡易課税から抜けられる構図
2年縛りが外れることで、次のような構図が生まれます。
個人事業者が、令和8年分から簡易課税を選んでいたとします。通常であれば、令和8年分と令和9年分は簡易課税です。一般課税に戻れるのは令和10年分からになります。
特例を使えば、令和9年分から一般課税にできます。簡易課税は令和8年の1年だけで終わります。
簡易課税を選んだあとで、一般課税のほうが有利だったと気づくことは起こり得ます。そうした事業者も、令和9年中に飲食料品を販売していれば、この特例の対象に入る可能性があります。
問3-2にも似た構図があります。免税事業者が令和9年に入ってから大きな設備投資をし、その後で課税事業者を選んで還付を受ける、という判断が考えられます。ただし、一定の固定資産を取得して一般課税で申告した場合は、原則として3年間は免税事業者に戻れません(問3-2の注3)。
「飲食料品の販売を行う」の範囲はまだ分からない
気になるのは、対象となる事業者の範囲です。Q&Aでは「飲食料品の譲渡を行う」事業者とされているだけです。売上に占める割合や、いつから販売しているかといった要件は示されていません。
文字どおりに読むと、ごく一部だけ食品を扱う事業者も含まれそうです。期の途中で食品の販売を始めた場合の扱いも、現時点では不明です。
一方で、範囲を絞るのも簡単ではありません。
対象はもともと免税事業者や簡易課税選択事業者で、規模の小さい事業者に限られます。売上規模で線を引いても、あまり絞り込めません。
絞るとすれば、売上に占める飲食料品の割合などが考えられます。ただ、割合を高くすると、食品と日用品を半々で扱うような小さな商店が外れてしまいます。税率引下げの影響を直接受ける事業者が、対象から漏れるおそれがあります。
特例が想定外に広く使われるのを防ぐことと、零細の商店を取りこぼさないこと。この両立を条文でどう設計するのか、法案の中身に注目しています。
