調査前に帳簿データを出したら、「バレた扱い」になるのか?

税務調査

国税庁が令和8年10月、「税務調査等における帳簿等データの提出依頼等に関するQ&A」を公表しました。

テーマは、実地の調査の前に、会計ソフトのデータなどを提出してもらう取組です。実地の調査とは、税務署の職員が事務所などに出向いて行う調査のことです。

これまでは、職員が来てから帳簿を確認するのが一般的でした。この取組では、先にデータを受け取り、確認作業の一部を税務署で済ませておきます。国税庁は、調査期間や立会いの時間が短くなり、納税者の負担軽減にもつながると説明しています(問1)。

依頼のタイミングは、原則として事前通知の後です。事前通知とは、調査の日時や対象となる税目・期間をあらかじめ知らせる手続です。ただし、日程の調整に時間がかかる場合などは、事前通知より前に依頼することもあるとされています(問2)。

依頼を断ることはできるのか

まず気になるのは、依頼に応じなかった場合です。

Q&Aは、正当な理由なく応じない場合は罰則規定(国税通則法128条)の対象となりうるとしています。一方で、応じないことだけをもって罰則が適用されるわけではなく、強権的に求めることもない、とも述べています(問5)。あくまで納税者の承諾を得て行うという立て付けです。

では、セキュリティが心配なので紙で出したい、あるいは調査当日に見せたい、という対応はどうか。Q&Aは「可能な限りデータでの提出に協力してほしい」という書き方にとどめています(問6)。

「帳簿を見せること自体には法律上応じる必要があるが、事前にデータで出すという方法までは強制しない」という整理だと考えます。

データを出した後の修正申告

本題は問8です。

調査が来ると分かってから、申告の誤りに自分で気づくことがあります。このとき修正申告を出すと、ペナルティである加算税の割合が変わります。

過少申告加算税で見ると、一般に次のように整理されます。調査通知の前に自主的に修正すれば、原則として加算税はかかりません。調査通知の後でも、「更正を予知して」出したものでなければ5%です。予知して出したものであれば10%になります。なお、増えた税額が一定額を超える部分は、割合が上乗せされる仕組みもあります。

更正とは、税務署が申告内容を正す処分のことです。「更正を予知して」とは、おおまかに言えば、税務署に誤りを把握されたと分かった後に出したという意味です。

ここで疑問が生じます。データを事前に出せば、税務署はすでに帳簿の中身を見ています。その後に修正申告を出したら、「見られたと分かって出した」として10%になるのではないかという疑問です。

Q&Aにおいては、データを提出したことだけをもって「更正を予知して」に該当するものではないとしています。

線はどこで引かれるのか

Q&Aは、予知に当たる例として、申告内容を検討した上での誤りの指摘などにより、納税者が調査のあったことを了知した後に修正申告を出した場合を挙げています。

つまり基準は、「データを渡したか」ではなく、「税務署から誤りの指摘などを受けたか」です。データを渡しただけの段階は、まだ5%の側にあると読めます。

私はこの取組を知ったとき、ここが一番気になっていました。データを渡した時点で、税務署は中身を把握できます。それなら予知と扱われても不思議ではない、と考えていたからです。Q&Aがこれを否定したことで、実務上の迷いが一つ減ったと感じています。

ただし、注意点が三つあります。

一つ目は、Q&A自身が「一般的な例」であり、個々の事実関係を精査して判断すると断っていることです。

二つ目は、事前の分析によって、指摘が臨場の前に来る可能性があることです。電話などで誤りを指摘された後に修正申告を出せば、多くの場合は予知後の扱いになると考えられます。

三つ目は、事前通知の前にデータを依頼された場合です。問8は「調査通知後」の修正申告を前提に書かれています。事前通知前の依頼の段階が、加算税の上で調査通知の前と後のどちらに当たるのかは、このQ&Aからは読み取れません。

データを出してから指摘までの時間

データを提出してから税務署の指摘を受けるまでには、一定の時間があります。その間に自分で誤りに気づいたなら、修正申告を検討する意味があります。指摘を受けた後では、同じ修正でも原則として5%が10%に上がるからです。

提出したデータを、自分の側でももう一度見直しておく。事前提出が広がると、その見直しの時間をどう使うかが、これまで以上に問われることになりそうです。

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