出産費用は、医療費控除の対象になります。ただ、出産予定が12月だと少し事情が変わります。お産が年をまたぐと、控除の計算が二つの年に分かれることがあるからです。本人が出産する場合も、配偶者が出産する場合も、考え方は同じです。
なお、我が家の場合の出産費用と医療費控除について以下の記事で紹介をしています。

基準は出産日ではなく「支払った日」
医療費控除は、1月から12月までに実際に支払った医療費で計算します。いつ出産したかでは決まりません。
たとえば12月28日に出産し、1月4日に退院したとします。退院時にまとめて精算すれば、分娩費と入院費は翌年分の医療費です。一方、妊婦健診の自己負担や通院の交通費は、多くの場合その年のうちに払っています。こうして、出産の医療費が二つの年に分かれます。
困るのは、足切りが年ごとにかかることです。医療費控除の対象は、医療費の合計から10万円(総所得金額等が200万円未満の人はその5%)を引いた残りです。医療費が二つの年に分かれると、どちらの年も足切りを超えない、ということが起こりえます。
クレジットカードで払った場合は、窓口でカードを切った日が支払った日です。引き落としが翌年2月でも、その年の医療費になります。
出産育児一時金は、払った年ごとに分けて差し引く
出産すると、健康保険から出産育児一時金(現在は原則50万円)が出ます。控除の計算では、これを出産費用から差し引きます。
年をまたいで払った場合、一時金は支払った金額の割合で各年に振り分けて差し引くと整理されています。たとえば出産費用が総額65万円で、12月に30万円、1月に35万円を払ったとします。一時金50万円のうち約23万円が12月の年、約27万円が翌年に割り当てられます。差し引いた後の医療費は、12月の年が約7万円、翌年が約8万円です。
一時金が出産費用を上回っても、余りを健診費やほかの医療費から引く必要はありません。申告の時点で金額が決まっていなければ、見込み額で差し引きます。
産休中の収入を補う出産手当金は、医療費の補てんではないため差し引きません。一方、帝王切開など保険診療になる場合は、高額療養費の払い戻しや、民間医療保険の入院・手術給付金を差し引きます。これも、その出産にかかった費用の範囲までです。
自治体の助成も確認が要ります。東京都の無痛分娩費用の助成のように医療費そのものを補うものは、一般に差し引くべきと考えます。医療費に充てることを目的としない給付金やポイントは、一般に差し引かなくてよいと考えます。
年内に精算を寄せる工夫は、どこまで意味があるか
病院に頼んで年内に精算してもらう方法は、効果が限られます。
先ほどのとおり、一時金は支払額の割合で振り分けられます。年内に多く払えば、その分一時金も多く割り当てられます。差し引いた後の自己負担の合計は、どちらの年に寄せても変わりません。動くのは、それがどちらの年に入るかだけです。
寄せた先の年が有利とも限りません。翌年には、産後の受診や家族のふだんの医療費も入ります。両方の年の見込みを並べないと、どちらに寄せるべきかは決まりません。
入院時に保証金を多めに預けても前倒しにはなりません。保証金は入院費に充てられた時点の医療費になると整理されています。
病院が中間精算に応じるかも別の問題です。一時金の直接支払制度では、病院は退院時に総額を確定させてから一時金を請求します。個人的には、お産の前後に精算時期を交渉してもらうのは、手間のわりに得るものが小さいと感じています。
誰が申告し、何を残しておくか
医療費控除は、医療費を支払った人が受けるのが原則です。ただ、夫婦の家計が一つになっている場合は、一般にどちらで申告しても差し支えないこととされています。多くの場合は税率の高い方が申告すると戻る額が大きくなります。
正常分娩や妊婦健診は保険の対象外のため、健康保険の医療費通知にも、マイナポータルの自動取り込みにも出てきません。病院の領収書と明細は、5年間手元に残しておく必要があります。
なお、正常分娩の費用を公的医療保険でまかなう改正法が2026年5月に成立しました。ただ、開始は2028年6月ごろまでの見込みです。この年末の出産は、これまでどおり一時金の仕組みで考えれば足ります。
