2026年4月、新年度予算が成立しました。これに伴い、今年8月から高額療養費制度の見直しが始まります。報道などでも取り上げられていますが、内容が少し複雑です。「自分の負担はどう変わるのか」が分かりにくい改正ですので、要点を整理しておきます。
高額療養費制度とは
高額療養費制度は、1か月にかかった医療費の自己負担額が一定額を超えた場合、超えた分が後から払い戻される仕組みです。所得に応じて上限が設けられているのが特徴で、たとえば70歳未満で年収370万〜770万円の方であれば、現行は月8万100円+αが上限となっています。
仮に1か月の医療費が100万円かかったとしても、窓口で3割負担(30万円)を支払い、後日、上限を超える約21万円が戻ってくる、という建付けです。あらかじめ「限度額適用認定証」を提示すれば、窓口負担そのものを上限額までに抑えることもできます。
日本の公的医療保険は、自己負担割合が3割という点だけが強調されがちですが、本当のセーフティネットはこの高額療養費制度のほうにあると感じています。
2026年8月からの改正点は2つ
今回の見直しのポイントは、大きく2つです。
1つは、月額の自己負担上限額が引き上げられること。 もう1つは、年間の自己負担上限が新たに設けられることです。
引き上げは2段階で行われます。第1段階が2026年8月、第2段階が2027年8月です。報道によれば、所得区分も細分化されます。たとえば年収370万〜770万円の区分は、2027年8月から「370万〜510万円」「510万〜650万円」「650万〜770万円」の3つに分かれる予定です。
月額上限はどれくらい上がるのか
具体的な数字でいうと、年収約370万〜770万円の所得区分では、現行の月額上限「8万100円+1%」が、2026年8月から「8万5,800円+1%」になる見込みです。さらに2027年8月には所得区分の細分化に伴い、上の区分では「11万400円+1%」まで上がります。
医療費が同じでも、窓口で支払う額が増えるということです。一般的には、高所得層ほど引き上げ幅が大きくなる設計になっています。負担増の幅は世帯によって異なりますので、ご自身の年収区分でどう変わるかは、加入されている健康保険組合や協会けんぽの案内をご確認ください。
新設される「年間上限」とは
もう一方の柱が、年間上限の新設です。 これは、月単位では上限に届かないものの、毎月そこそこの医療費が継続的にかかる方への配慮として導入されます。
たとえば年収370万〜770万円の所得区分であれば、年間上限は53万円とされる見込みです。1年間の自己負担合計が53万円に達した段階で、それ以降のその年の窓口負担はなくなります。
これは、長期にわたる治療を受けている方にとっては大きな意味があります。月7〜8万円の医療費が毎月続く、といったケースでは、これまで月額上限に届かないため高額療養費の対象外でしたが、年ベースで見れば負担が軽くなる方向に動きます。
改正をどう受け止めるか
今回の改正、月単位で見れば負担増です。ここは事実として動かしようがありません。一方で、年単位で見れば、長期療養者の負担にブレーキがかかる仕組みが入りました。
「公的保険が改悪されたから民間の医療保険に入らなければ」という反応も見かけますが、私は必ずしもそうは思いません。年間上限ができたことで、最大の自己負担額があらかじめ見える形になったとも言えます。最悪のケースでも年53万円(所得区分により異なります)で済む、という見通しが立ちます。
ここは見方が分かれるところですが、家計のリスク管理という観点では、想定される最大損失が確定していることの意味は小さくないと感じます。手元資金で備える方針を取られている方であれば、必要な貯蓄額の目安が立てやすくなったとも言えます。
確定申告時の留意点
高額療養費制度で払い戻された分は、医療費控除(所得税の控除)の計算上、自己負担額から差し引いて計算します。確定申告で医療費控除を使う際に、ここを失念すると申告誤りになりますのでご注意ください。マイナポータルとe-Taxの連携を活用すれば、自動入力で対応できる場面も増えています。
制度の細かい数字や適用区分は、今後の国会審議や省令改正で微修正される可能性があります。具体的な治療予定がある方は、加入されている保険者にご確認いただくのが確実です。

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