YouTuber等が受け取った提供品をどう処理するか

所得税

YouTuberやインフルエンサーが、企業から物品の提供を受けるケースがあります。カメラや照明などの撮影機材、パソコン、化粧品、衣類、食品、サプリ、サービス利用券。動画やSNSで紹介することを条件に、無償または貸与の形で送られてくるものです。

この「提供品」、税務上の扱いは意外と論点が多くあります。受け取った側、つまりYouTuber側の処理を中心に整理してみます。提供される物の種類は問いません。考え方は共通しています。

まず「もらったのか、借りたのか」を確認する

最初に押さえるべきは、契約の性質です。提供物が譲渡(所有権の移転)なのか、貸与(一定期間後に返却)なのか。ここを取り違えると、後の処理がすべてずれます。

譲渡であれば、受け取った時点で収益を認識する必要があります。一般に、動画やSNSで紹介することを条件に物品を受け取った場合、その物品の時価相当額が収入となります。役務提供(紹介投稿)の対価として現物を受け取った、と整理するのが自然です。

貸与の場合は、所有権が移転していないため、受領時の収益認識は不要です。ただし、契約期間終了後にそのまま使い続けることが黙認されているような実態であれば、実質的には譲渡として扱われる余地が出てきます。書面で明確にしておくことが望ましいです。

時価をどう見るか

譲渡と整理した場合、次の論点は「いくらで収益計上するか」です。提供側の希望小売価格なのか、ネット通販での実勢価格なのか、消耗品であれば店頭価格なのか。

実務上は、合理的に算定できる範囲で時価を見積もる、という対応になります。新品であればメーカー希望小売価格や提供側から示された金額を基礎にすることが多いでしょう。スクリーンショットや当時のページ情報を残しておくと、後の説明がしやすくなります。化粧品や食品など消耗品の場合は、提供時点の市場価格を記録しておけば十分です。

受け取った物品は資産計上か、経費か

収益として計上した提供物は、同時に事業用資産または事業用消耗品として取得したことになります。ここから先は通常の処理ルールに従います。

消耗品(食品、化粧品、サンプル等)であれば、その期の消耗品費等として処理します。

10万円未満の備品であれば消耗品費などで一括経費。10万円以上20万円未満なら一括償却資産として3年で均等償却。それ以上の備品は通常の減価償却となります。

ここで令和8年度税制改正に触れておきます。中小企業者等の少額減価償却資産の特例(措法67の5)は、令和8年4月1日以後に取得した資産から、取得価額40万円未満であれば全額即時償却できることになりました。これまで30万円未満が基準でしたが、40万円未満まで枠が広がっています。適用期限も令和11年3月31日まで3年延長され、対象となる事業者の常時使用する従業員数の要件が500人以下から400人以下に引き下げられました。この改正は法人だけでなく、青色申告の個人事業主にも同様に適用されます。年間合計300万円の上限は変わりません。

つまり、提供品の時価が40万円未満であれば、青色申告の個人YouTuberや法人化したチャンネル運営者であれば、その期に一括で経費化できる選択肢が広がったことになります。

なお、収益と費用が同じ金額で立つため、利益への影響は基本的にありません。ただし、特例の適用要件を満たしているかは確認が必要ですし、複数年にわたる償却となる資産であれば、収益はその年に一括計上、費用は数年に分散、という形で利益にずれが生じます。

消費税の取扱い

提供物を受け取ったとき、消費税法上は「役務提供(動画・SNSでの紹介)の対価として現物を受け取った」と整理することになります。提供側との間に対価関係があれば、課税売上が立ち、同時に課税仕入も立つ、という両建ての処理が一般的な考え方です。

ただし、契約上「対価性のない単なる贈与」と読める内容であれば、不課税という整理もあり得ます。実態は広告案件であることが多いので、対価性ありと見るほうが素直なケースが大半だと感じます。インボイス制度下では、提供側からの請求書等の交付がない取引が多いため、仕入税額控除の要件を満たせないことも実務上の論点になります。

源泉徴収はどうなるか

受け取る側に源泉徴収義務が発生するかは、誰に何を支払うかで決まります。今回想定しているのは「企業がYouTuberに物品を提供し、YouTuberが動画で紹介する」という流れなので、受け取る側の源泉徴収義務は通常発生しません。

逆方向、つまりYouTuberが企業から金銭の広告料を受け取る場合は、原稿料・デザイン料等に該当しなければ源泉徴収の対象外です。一般論として、広告枠の提供は源泉対象外、特定の制作物の納品は源泉対象、という整理が多いと感じます。契約内容の精査が必要です。

調査で見られる可能性は、過度に恐れなくてよい

元国税職員としての視点を一つ加えるなら、提供品の収益計上漏れは、調査でゼロから掘り起こすには手間のかかる論点です。提供側の帳簿との突合や、SNS・動画の確認が必要になります。優先順位として最上位にくる項目ではない、というのが正直な感覚です。

とはいえ、論点として認識されていないわけではありません。インフルエンサー経済の規模が大きくなるにつれ、税務当局の関心も上がっています。受け取った記録、時価の根拠、契約書面。この3点を残しておけば、聞かれたときに困らずに済みます。あまり構えず、淡々と記録を残す。それで十分だと考えます。

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