会計士の方と話していると、「税理士政治連盟は会計士の税理士登録に批判的だ」という話を聞くことがあります。会計士の間では、ほぼ常識のように語られているようです。
組織の整理をすると、会計士への資格付与の見直しを正式に決めて要望したのは、税理士会の連合体である日本税理士会連合会(日税連)です。日本税理士政治連盟(日税政)は、日税連の要望を政治の場で実現するための別の団体です。主張の中身は日税連、政治への働きかけは日税政という分担になっています。
経緯は次のとおりです。日税連は平成22年ごろから、「会計士は税法の科目に合格することを原則とすべき」という方向を示していました。平成24年には改正要望書を国税庁長官と財務省主税局長に提出しています。その後、平成25年12月に会計士協会との間で合意が成立しました。平成26年の税理士法改正で、会計士への税理士資格の自動付与は廃止されています。平成29年4月1日以後に会計士試験に合格した人は、税法に関する所定の研修を修了しないと税理士の資格を得られません。
批判されたのは「登録」ではなく「自動付与」
ここで区別しておきたい点があります。税理士側が問題にしたのは、会計士が税理士登録すること自体ではありません。税法の能力を確かめる手続を経ずに、自動で資格が付く仕組みです。
この区別が抜けると、「税理士業界は会計士を締め出したい」という受け止め方になります。また、この件は平成25年の両団体の合意で一応の決着がついています。現在の政治連盟の運動方針を見ても、会計士を名指しで批判する文言は、私が確認した範囲では見当たりませんでした。「常識」は半分正しく、半分は古い話だと言えそうです。
どちらの主張にも利害がある
とはいえ、税理士側の主張を純粋な「質の確保」の話とだけ見るのも無理があります。要望が本格化したのは、会計士試験の合格者が急増した時期と重なります。仕事の領域を守りたいという動機がなかったとは言いにくいでしょう。
会計士側にも反論の根拠はあります。会計士試験では租税法が必須科目です。合格後の実務補習でも税務の研修があります。さらに会計士側は当時、税務署などの勤務経験で試験が免除される人の扱いに触れていない点を指摘しました。「試験で能力を確かめるべき」という原則を会計士にだけ求めるのは一貫しない、という指摘です。これは国税出身の私のような税理士にも向けられる論点です。
会務の担い手という別の角度
この話が気になったのは、制度の是非そのものより、会務の担い手の問題があったからです。会務とは、税理士会の委員会や支部の運営などの仕事です。担い手が減っていることは、税理士会の中でも課題になっています。そのなかで、会計士出身の税理士が会務に関わる例は少ないように見えます。ただし、これは印象で裏付けとなる数字は持っていません。
そんな折、こんな意見を目にしました。会計士税理士の本音は、そもそも税理士登録をせずに税務をやりたいというものだ。税理士会の会費はいわば「みかじめ料」で、最低限払っていれば十分だろう、というものです。
制度の面から見ると、この意見には一定の根拠があります。税理士でない人は、原則として税理士業務を行えません(税理士法52条)。弁護士には国税局長への通知で税理士業務を行える道があります(同法51条)が、会計士にはありません。そして登録すれば、税理士会には自動的に加入します(同法49条の6)。会計士の中には、会計関連の業務を提供する際にどうしても税務が含まれてしまい、税務は無償独占なので税理士登録せざるを得ないという方もいらっしゃると思います。そこに会費以上の関わりを求められても困るという感覚は理解できます。
会務を担う側から見れば、負担を分け合ってほしいのが本音です。一方で、自分で望んで入ったわけではない団体に、積極的な関わりを求めるのも筋が悪い気がします。
会計士の自動付与をめぐる論争は、登録の入口の話でした。会務の担い手の問題は、登録したあとの話です。入口で「税理士として認めるかどうか」を争った経緯が、登録後の帰属意識にどう影響しているのか。そこは一般論では語れず、今のところ分かりません。
