前回、実家のゴルフ会員権をどうにかしたいと相談された話を書きました。今回はその続きです。

届いた書類は「退会」ではなかった
ゴルフ場から、手続の書類一式が実家に届きました。案内文には「退会」「放棄」とあります。ところが、中身を読むと違いました。
書類の中心は、関連会社への譲渡に関する覚書です。預託金を含むすべての権利を、その関連会社に無償で譲渡すると書かれています。名義書換の依頼書も父を「譲渡人」とする書式でした。
法律上は、権利を捨てる「放棄」ではなく、関連会社にタダで譲る「贈与」にあたるため、預けたお金を返してもらう権利は消えずに関連会社に移ります。
つまり、このゴルフ場には、預託金を残したまま退会する手続が用意されていませんでした。以前、電話で「今退会すると預けたお金は返ってこない」と言われたのは、この意味だったのだと思います。
売れないはずの会員権が、関連会社には移る
もう一つ、気になる点があります。このゴルフ場は、名義変更を止めています。そのため、業者を通じて売ることができません。それなのに、関連会社への名義書換は受け付けているわけです。
市場での売買は止めながら、会員が手放す権利をグループ内で集めている形です。ゴルフ場側が、この権利に一定の価値を見ている表れとも読めます。
業者に聞いてみた
タダで譲るのは最低ラインです。少しでも値がつくなら、そのほうがよいはずです。そこで、ゴルフ会員権の売買を取り扱っている業者に問い合わせてみました。
業者の方からは丁寧な返事が届きました。結論は、取扱いはできないとのことでした。数年前までは、名義変更が止まっていても少額ながら取引できていたものの、いまはできないそうです。据置期間も来ていないので、処分の方法は退会しかないという見立てでした。
あわせて、気になる話も聞きました。同じゴルフ場で据置期間が明けて返還を求めたものの、応じてもらえず、裁判で判決が出てもまだ返金されていない人がいるそうです。業者から聞いた話で、私自身は確認していません。
ただ、判決が出ても、相手が払わなければお金は戻りません。強制的に回収する手続もありますが、相手に差し押さえられる財産がなければ回収はできません。
この話を聞いて、据置期間の満了まで待つかどうかの迷いはほぼなくなりました。
年会費についても助言をいただきました。利用しないなら払わなくてもよく、未納があっても退会はいつでもできるとのことです。ただ、未納分の扱いは会則によって異なる可能性があります。念のため、ゴルフ場にも確認しておくつもりです。
無償で譲ったときの税金
関連会社への無償譲渡は、税金の面ではどうなるか。個人が法人に資産を贈与した場合、その時の価額(時価)で売ったものとみなされます(所得税法59条1項1号)。
この会員権の時価は、市場で値がつかない以上、一般にはごくわずかと考えられます。受け取る関連会社が価値を見ているとしても、売買の相場がないものを高く見積もる根拠は乏しいと考えられます。時価が取得費を下回れば、所得は出ません。損失が出ても、ほかの所得と相殺はできません。実務上、申告が必要になる場面は多くないと思います。
