申告書や申請書は、一度提出してしまっても「取下書」によって取り下げることができます。法令上の提出事由に該当していなかったり、提出期限を過ぎていたりした場合、本来であれば税務署側が却下などの行政処分を行うことになります。しかし、実務ではそうなる前に取下書の提出を促すケースが多いように感じます。
なぜ取下げが促されるのか
却下は不利益処分にあたります。不利益処分であれば、納税者側に訴えの利益が生じ、不服申立ての対象にもなります。税務署側からすれば、手続きが煩雑になります。納税者側にとっても、書類が法令の要件を満たしていない以上、争っても得るものは少ないことが多いです。お互いにとって、最初から提出がなかったことにする方が穏当である、という判断が働きます。
もう一つ、これは完全に税務署側の内部事情ですが、処理期限の問題があります。例えば、更正の請求書が原本提出されたものの、減額更正の根拠資料が添付書類として不足している場合です。税理士・納税者側の対応が後手に回ると、還付加算金(還付金に付される利息相当額)が日々発生する場合もあります。署側としては、一旦仕切り直してほしいという思惑から取下書の提出を促すことがあります。
税理士・納税者側の対応が遅れて取下書が慫慂されるのであれば、まだ理解できます。問題は、更正の請求書の処理担当者側が手続きをおろそかにした結果、税理士・納税者側はきちんと対応しているにもかかわらず、明確な理由もないまま取下書を慫慂される、という例も過去には見てきました。なんとも粗末な話です。現在はそのようなことが少なくなっていることを願っています。
取下書の書き方
取下書には特定のフォーマットがありません。一般的には、取り下げる対象の申請書等の提出日、申請書名、そして取り下げる旨を記載すれば足ります。
ただし、以下のものについては既定の様式が用意されています。延納申請取下げ書、物納申請取下げ書、審査請求取下書、審査請求参加取下書、行政文書開示請求取下書、保有個人情報の開示等請求取下書、相互協議申立ての取下書、仲裁要請の取下書です。これらは国税庁ホームページから様式が入手できます。
e-Taxでの代理送信 — 令和6年11月からの取扱い
税理士がe-Taxで取下書を代理送信する場合、令和6年11月から取扱いが整理されました。「税務代理権限証書」の「その他の事項」欄に申請書等の取下げの意向を入力のうえ代理送信すれば、税務署等において「申請書等の取下書」として取り扱われます。
留意点は二つあります。一つは、申告等データとは別に税務代理権限証書のみを送信すること。もう一つは、「基申告書(申請書)の受付番号」欄に「123」と入力すること(民間税務ソフトでエラーになる場合は未入力でも可)です。「その他の事項」欄には、受付番号、申請書等の手続名称、取下の意向の3点を記載します。
送信後の受信通知にワーニングメッセージが表示されますが、これは正常に受け付けられた合図であり、再送信は不要です。ただし、ワーニングメッセージが表示されない場合は、送信先の税務署等へ電話連絡することとされています。
紙提出の場合はどうなるのか
ここからは私見です。令和6年11月の取扱いはあくまでe-Taxでの代理送信に関するもので、紙提出の場合の手続きが正面から整理されているわけではありません。e-Taxを推奨している国税庁としては、紙の場合の取下書の手続きをあえて積極的に案内しない、という意向があるのかもしれません。
もっとも、紙の税務代理権限証書の「その他の事項」欄に同様の記載をすれば、取下書として取り扱ってもらえる可能性は高いように思います。確実を期すのであれば、提出先の税務署に事前に確認するのが無難です。

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