倒産防止共済を解約する前に――「課税の繰延べ」という前提と、出口の設計

税金全般

倒産防止共済(経営セーフティ共済)は、契約者の都合でいつでも解約できます。「加入から〇か月は解約できない」という縛りはありません。

ただし、戻ってくる解約手当金の割合は、掛金を納めた月数で変わります。納付月数が12か月に満たないと、解約手当金は受け取れません。納めた掛金は戻らず、掛け捨てになります。任意解約の場合、納付月数が40か月以上で、共済金の貸付けを一度も受けていなければ、掛金の全額が戻ります。12か月以上40か月未満で解約すると、戻るのは8〜9割台にとどまり、元本割れします。

一部だけ引き出す「一部解約」という仕組みはありません。解約するなら契約全体の解約です。40か月以上で解約すれば、それまで積み立てた掛金が一度に全額返ってきます。

戻ってきたお金は、その年の益金になる

法人が受け取った解約手当金は、その事業年度の益金(会計では雑収入など)になります。分割して受け取ることも、分割して益金にすることもできません。

掛金を払った年には損金の額が立ちます。しかし解約した年には、同じ額が収入として戻ってきます。トータルで見れば、税金が消えるわけではありません。課税のタイミングを後ろにずらしているだけです。倒産防止共済は「節税」と語られがちですが、実際には「課税の繰延べ」です。

たとえば掛金が上限の800万円に達した契約を解約すると、その期に800万円の雑収入が一気に乗ります。何の対策もなければ、その年の利益が大きく膨らみます。だからこそ、退職金を支給する年や、大きな損失が出る年に解約時期を合わせる、という出口の設計が要ります。

「保険積立金」で処理しても、出口は消えない

掛金の会計処理には二通りあります。費用として処理する方法と、「保険積立金」として資産に計上する方法です。

資産計上した場合、損益計算書には費用が出てきません。会計上の利益は減りません。一方で税務上は、申告書で減算して損金に算入します。帳簿の上では資産が積み上がる一方、税金の計算ではその年ごとに経費として引いている、という状態になります。

問題は出口です。解約手当金を受け取ると、会計上は積み立てた資産を取り崩します。帳簿では収入と取崩しが相殺され、利益が出ていないように見えることがあります。ところが税務上は、これまで申告で減算してきた分を、解約の年に戻す処理が必要です。結果として、損益計算書は赤字なのに課税所得は発生する、という直感に反する状態が起こり得ます。

資産計上には、利益を見かけ上ゆがめないという利点があります。ただ、出口で課税が待っていることは、費用処理の場合と変わりません。処理方法を選ぶ段階で、出口まで見ておく必要があります。

令和6年10月の改正――解約してすぐ入り直すと損金算入不可

令和6年度税制改正で、新しい制約が入りました。

令和6年10月1日以降に契約を解約し、再び加入した場合、解約の日から2年を経過する日までに支払う掛金は、損金(個人は必要経費)の額に算入できません。所得税でも同じ扱いです。

たとえば令和6年10月末に解約し、翌11月に入り直すと、令和8年10月末まで掛金を損金にできません。解約してすぐ入り直し、繰延べを繰り返す。そうした使い方が封じられました。将来また加入する可能性があるなら、この2年を踏まえて解約時期を考える必要があります。

なお、契約を残したまま資金だけ手当てしたいなら、一時貸付金という手段があります。借りたお金なので益金にはならず、2年ルールにも触れません。

前納の「1年」は、法律ではなく通達に書いてある

掛金は前納(前払い)できます。1年分(最大240万円)をまとめて払えば、その全額を当期の損金の額に算入できます。決算間際の対策によく使われます。

掛金の損金算入の根拠は、租税特別措置法第66条の11です。条文は、支出した掛金を損金の額に算入する、という建付けで、期間の定めはありません。「前納は1年以内」という線引きが書かれているのは、条文ではなく措置法の通達(66の11-3)です。

私見ですが、法律本文に期間の定めがないところに、通達で「1年以内」と区切っている点には、少し引っかかりを覚えます。前納した掛金は、本来その月が来るまで効力が生じないので、支出時に当然に損金になるとは言い切れない、という説明はつきます。それでも、納税者を縛る線引きが通達の中だけにある、という形は、法解釈として議論の余地があると感じています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました