法人税40の納税と消費税100の還付が差引60で処理されることの整理

税金全般

決算や確定申告の時期には、複数の税目の申告書をまとめて出すことになります。法人であれば法人税と消費税、個人事業者であれば所得税と消費税です。

このとき、片方が納付で、もう片方が還付になる場面が出てきます。法人税は納付だが消費税は還付。あるいはその逆で、法人税は還付だが消費税は納付。設備投資が大きかった年や、輸出の割合が高い事業では、そう珍しいことでもありません。

同じ税務署に、同じ日に、納める申告書と返してもらう申告書を出す。この二つは差し引いてもらえるのか。

結論:差し引いて処理されます

たとえば、法人税は40の納付、消費税は100の還付だったとします。差し引いて60だけ返してくれるのか。結論として、そのように処理されます。

根拠は国税通則法57条1項です。税務署長は、還付金等がある場合に、その還付を受けるべき者に納付すべきこととなっている国税があるときは、還付に代えてその国税に充当しなければならない、と定めています。「できる」ではなく「しなければならない」。税務署の裁量ではなく、義務です。

税目が違っても支障はありません。条文は「国税」としか書いていないためです。所得税と消費税の組み合わせでも、考え方は同じです。

民法の相殺とは別の制度です

ここで気になるのが、民法の相殺との関係です。民法505条の相殺は、当事者の一方が意思表示をして債権と債務を消滅させる仕組みです。国税通則法57条の充当は、税務署長が行う処分です。条文の作りは別物です。

もっとも、両者の働きは近いものと理解されています。国税不服審判所の裁決は、最高裁平成6年4月19日判決を引きながら、充当の機能は民法の相殺と異なるところはない、と述べています。

違うのは、動かす側です。納税者の側から「相殺します」と一方的に伝えて納税額を消す仕組みにはなっていません。あくまで税務署長が充当するかたちをとります。

充当は税務署長の処分なので、行われたときは納税者に通知されます(同条3項)。入金額が想定と違うときは、この通知で内訳を確かめられます。また、充当は課税処分とは別個の処分と整理されており、充当そのものを対象とした不服申立ても想定されています。

いつ納付したことになるのか

充当されると、その国税は納付があったものとみなされます(同条2項)。次に問題になるのは、いつの時点で納付したことになるかです。

これを充当適状といい、国税通則法施行令23条が定めています。原則は、充当される国税の法定納期限と、還付金等が生じた時の、いずれか遅い時です。

二つの申告書を同じ日に出したのであれば、その日が充当適状日になると考えられます。この場合、延滞税の心配は通常ありません。還付金の処理に時間がかかっても、みなされる納付の時点は動かないためです。逆に、還付金が生じた時期が法定納期限より後ろにずれる場合は、その間の延滞税が生じ得ます。

なお、納付になる方を先に納めてしまえば、充当される国税がなくなり、還付は満額で戻ります。差引き60を待つか、いったん納付して満額の還付を受けるか。手元資金の動きは変わりますが、最終的な金額は同じです。実際の入金までには一定の期間がかかります。

充当適状の前でも申し出はできる

国税通則法基本通達57条関係6は、充当適状前の国税について充当の申出があったときは、その申出の日を充当適状日として充当する、と定めています。申出は書面によります。納付すべき額が確定しているものに限られます。

差し引けない組み合わせもある

充当できるのは、同一の納税者の国税どうしです。代表者個人の所得税の還付を、法人の法人税に充てることはできません。

地方税も別です。法人住民税や法人事業税は課税する団体が異なるため、一般に、国税の還付金と差し引くことはできません。消費税で大きな還付が出た年でも、地方税は地方税として資金を用意しておく必要があります。

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