令和8年8月21日、国税審議会から2つのお知らせが出ました。1つは試験結果の発表方法の変更、もう1つは試験問題の誤りについてです。別々の文書ですが、並べて読むと見えてくるものがあります。
令和8年度(第76回)税理士試験における試験結果の発表方法の変更について
https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishishiken/shikenkekka/76/pdf/0026007-116.pdf
令和8年度(第76回)税理士試験における 試験問題の誤りについて https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishishiken/shikenkekka/76/pdf/0026008-050.pdf
令和8年度から、全ての受験者に得点が通知されます
これまでは、5科目合格者には合格証書が交付され、一部科目合格者には合格した旨だけを記載した結果通知書が送られていました。得点が通知されていたのは、合格点に達しなかった科目がある人だけです。令和8年度(第76回)からは、これまで得点が通知されていなかった5科目合格者と一部科目合格者にも、新たに得点が通知されます。これにより、全ての受験者が各受験科目の得点を知ることになります。理由として挙げられているのは、一部科目合格者等から得点通知を求める要望が高まっていること、そして受験者サービスの向上です。
少しずつ開いてきた通知の内容
税理士試験の結果通知は、長く不透明だと言われてきました。かつては、合格点に達しなかった人にA・B・C・Dといった判定が示されるだけでした。Aが合格に近い、という程度の情報です。傾斜配点等もあるやに聞いており、実際にあと何点だったのかは分かりません。
その後、不合格科目については得点そのものが通知されるようになりました。合格者の受験番号も公表されています。そして今回、全員に得点が通知されます。段階的に開いてきた、という流れは読み取れます。
ただ、今回の文書に「透明性」という言葉は出てきません。書かれているのは受験者サービスの向上です。制度としての説明責任ではなく、サービスとして整理されている。細かい話ですが、ここは少し引っかかりました。
同じ日に、出題の誤りが公表されました
もう1つの文書は、所得税法と住民税の試験問題に誤りがあったというものです。住民税は第二問。資料の注書きで「甲の兄」と記載すべきところを「甲の次男」と記載していました。その結果、甲の兄に係る令和8年度分として納付すべき税額について、本来の出題の意図とは異なる税額が算出される内容になっていました。所得税法も第二問です。資料Ⅳの1で「乙は」と記載すべきところを「甲は」と記載しており、本来の出題の意図とは異なる出題内容になっていました。
どちらも登場人物の取り違えです。文字にすれば数文字の差ですが、税額計算の問題では前提が変われば答えは全部変わります。誰の所得なのか、誰と生計を一にしているのか、年齢はいくつか。人物が入れ替われば、そこから先の判断が丸ごと動きます。第二問という配点の大きい問題である以上、影響は小さくないはずです。
「不利とならないように配慮」とは何をすることか
住民税については、当該問の採点に当たって受験者の不利とならないよう配慮する、と記載されています。お詫びと再発防止の記述もあります。
ただ、配慮の中身は書かれていません。考えられる対応はいくつかあります。その設問を全員正解として扱う。配点から除いて他の設問に振り替える。誤った前提で解いた答案も正解として扱う。どれを採るかで、受験者どうしの有利不利は変わります。誤りに気づかず素直に解いた人と、気づいて手を止めた人とでは、置かれた状況がまるで違うからです。
税理士試験は、一般に、満点の60パーセントが合格基準とされています。一方で、実際の合格率は科目ごとにおおむね一定の幅に収まっており、実質的には相対的な調整が働いているという見方もあります。仮にそうだとすると、1つの設問の扱いをどう決めるかは、その科目の合格者数に直接効いてくることになります。
点数は出す、採点の中身は出さない
得点通知の拡大は、受験者にとって前進だと思います。あと何点だったのかが分かる科目が増えます。次に何をすべきかの判断材料になります。
一方で、通知されるのは点数だけです。配点も、採点基準も、模範解答も公表されていません。今年の所得税法と住民税を受けた人は、通知された点数を見ても、誤りのあった第二問がどう処理されたのかを確認する手立てがありません。
この2つの文書を並べて読むと、税理士試験の情報公開がどのあたりにいるのかがよく分かります。点数は出す。採点の中身は出さない。誤りは公表する。対応の中身までは書かない。
税理士試験は、働きながら何年もかけて受ける人が多い試験です。手応えと結果が結びつかない経験が重なれば、続ける理由は薄くなります。実力ではなく納得できなさが理由で離れていく人が、一定数いるように思います。だからこそ、誤りへの対応が合格発表までにどう説明されるのか、そこを見ておきたいと考えています。
