厚生労働省は令和8年9月14日、社会保険料削減ビジネスに関する資料を二つ公表しました。一つは社会保障審議会年金事業管理部会に出された事業所調査の報告、もう一つは新しい取扱いを示した通知です。令和8年3月18日の通知の続きにあたります。
45社の調査で、11,610人が資格喪失
調査を実施した事業所は45社です。このうち38社は、指導を受けて対象者全員の被保険者資格喪失届を提出しています。資格を喪失した人数は、令和8年8月31日時点で11,610人。残りは調査継続中とされています。
今度は「役員」ではなく「短時間の正社員」
3月18日の通知が対象にしていたのは、法人の役員である個人事業主等でした。一般社団法人の役員に就任させ、役員としての実態がないまま社会保険を適用させる形です。
今回の通知が扱うのは、役員ではない立場です。個人事業主等を、勤務時間が極端に短い正規型の労働者として雇用する。つまり短時間勤務の正社員という形にして、資格取得届を出す。その一方で、本人からは会費などの名目で報酬を上回る額を払わせる。調査の過程でこうした手法が確認されたため、9月14日付けで新しい通知が出された、という流れです。
役員という入口が塞がれたので、従業員という入口に移った。そう整理してよいと思います。
通知が見ている二つの点
通知は、常用的使用関係があるかどうかを二つの面から見るとしています。
一つは報酬です。労働者として受け取る報酬を上回る会費等を事業所に払っている場合、業務の対価としての経常的な支払いがあるとは言えない、とされています。会費等の名称は問いません。勉強費、広告費、掲載料、参加料、コンサルタント料、協力金、委託費などが例示されています。関連法人に払わせている場合も、その支払いが労働者になるための実質的な条件になっているなら、同じ扱いです。会費が報酬と同額または下回っていても、報酬の多くを占める状態が常態化していれば、就労の実態を総合的に見て判断するとされています。
もう一つは業務の中身です。1週間または1月の労働時間が常態的に極端に短い場合が挙げられています。あわせて、業務がアンケート回答や勉強会参加といった自己研さんにとどまるもの、活動報告や情報共有、事業の紹介への協力にとどまるもの、労働者どうしの互助的な紹介にとどまるものが例示されています。個人事業主として行っている事業活動を、そのまま事業所の業務としているものも同じです。
この二つのいずれにも当たる場合は、原則として被保険者資格を有さないものとして扱う。どちらか一方であれば、個別具体的に総合判断する。これが通知の結論部分です。
実態のあるひとり法人との線引きは変わっていない
3月の通知が出たとき、問題にされているのは「役員であることの実態が伴わないケース」であって、小さくても自分で事業をしている法人そのものではないはずだ、と書きました。

今回の通知を読む限り、この線引きは変わっていません。見ているのは、報酬が業務の対価として自然か、労務の提供が経常的にあるか、という二点です。自分で出資し、自分で事業を行い、売上も立っているひとり法人が、これで直ちに否定されるとは読めません。
ただし通知は、契約の文言だけで判断せず、労働日数、労働時間、就労形態、勤務内容といった就労の実態から個別に判断するとしています。形式だけを整えた状態が弱いことは、法人の種類を問いません。
形が変われば、また繰り返される
今回で一区切りに見えますが、制度の側の誘因は残ります。国民健康保険と健康保険では、保険料の決まり方が違います。扶養の扱いも違います。この差が大きい以上、器を変えて負担を下げようとする動きは、形を変えて出てくると考えられます。役員から短時間正社員へ移ったのは、その一例です。
対応は通知の積み重ねで行われています。新しい手法が確認されるたびに、その取扱いを明確化する。今の枠組みではそうならざるを得ない面がありますが、追いかける側の作業は当分続きそうです。

