専業主夫が30年で3倍――第3号被保険者の仕組みと公平性を整理する

社会保険

2026年6月8日の日経新聞の朝刊に「『専業主夫』30年で3倍に」という記事が書いてありました。会社員などに扶養される配偶者が入る国民年金の「第3号被保険者」のうち、男性が2024年度末で約13万人になったという内容です。1994年度と比べると2.9倍です。

年代別では30代の伸びが目立ちます。一方で、第3号全体の人数は30年でほぼ半減しています。共働きが増え、自分で厚生年金に入る女性が増えたためです。男性の第3号が増えているのは、その裏返しと言えます。

第3号被保険者とは何か

第3号被保険者は、会社員や公務員(厚生年金に入っている人)に扶養される、20歳以上60歳未満の配偶者を指します。原則として年収130万円未満であることが条件です。

第3号になると、本人は国民年金の保険料を直接納めません。それでも、国民年金に加入しているものとして扱われます。将来は基礎年金を受け取れます。本人が払わずに済む、という点がこの制度の特徴です。

健康保険の被扶養者は別の制度

年金とよく混同されますが、健康保険の「被扶養者」は別の話です。会社員の配偶者の健康保険に被扶養者として入れれば、本人は国民健康保険の保険料を払わずに済む場合があります。こちらも年収130万円未満が大きな目安です。

ただし、注意したい点があります。個人事業主の場合、判定の基準になる「収入」は、所得税で言う「所得」とは一致しません。所得税では、青色申告特別控除や減価償却費を差し引いて所得を計算します。しかし社会保険の扶養判定では、これらをそのまま引けるとは限りません。最終的には、配偶者が加入する健康保険組合や協会けんぽの判断になります。

同じ「130万円」でも、税と社会保険では中身が違います。実務でも混同されやすい部分です。

制度のハック

近年指摘されているのは、ここからです。世帯の収入や資産に十分な余裕がある人が、転職や起業の準備期間だけ、一時的に配偶者の扶養に入る。その間は年金と健康保険の保険料を払わずに済む。要件を満たしていれば、これは違法ではありません。

問題視されているのは、制度の目的とのずれです。第3号被保険者は、もともと専業主婦や専業主夫など、配偶者に扶養される人を想定して作られました。1986年度の導入当時は、保険料を納めていない妻が離婚で無年金になるのを防ぐ狙いがありました。資産に余裕のある人が、短期間だけ保険料負担を避ける目的で使うことまでは、想定していなかったと考えられます。

私も、独立する前に、妻の扶養に入るシナリオを検討してはいました。退職から開業までの間は、収入が一時的に下がるためです。ただ、これから税理士として事業を続ける前提がはっきりしている以上、扶養の認定では慎重に見られやすいと考え、深くは踏み込みませんでした。単なる無職や転職待ちの人より、判断が難しい立場だと感じたためです。

自営業の世帯から見た公平感

自営業者の世帯では、世帯主だけでなく配偶者の分も、国民年金と国民健康保険の保険料がかかります。第3号のように「払わずに済む」仕組みはありません。

制度の目的が薄れていけば、こうした世帯との不公平感は強まります。報道によれば、制度を見直す動きも出ており、厚生労働省は2026年度中に、第3号にとどまる理由などの実態を調べる予定です。どう変わるかは、現時点では不明です。

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