「ふるさと住民」という言葉を、ニュースで見かけるようになりました。住んでいる場所とは別の地域に、住民に近い立場で登録できる制度です。総務省は2027年3月に始める方針と報じられています。
構想の段階では「第2の住民票」と呼ばれ、住民税を2か所に分けて納める案も話題になりました。登録したら税金が変わるのでは、と気になった方もいると思います。
この記事では、まず制度の中身を整理し、そのうえで税金との関係を見ていきます。
「ふるさと住民登録制度」とは
住んでいる市区町村とは別の地域に、継続して関わっている人を登録する仕組みです。出身地に帰省する人、同じ町に何度も旅行する人、別の町で副業やボランティアをしている人などが想定されています。
登録はスマートフォンのアプリで行い、システムは国が共通で用意します。制度に参加するかどうかは、自治体ごとに決めます。参加していない自治体には登録できません。総務省の調査では、7割余りの自治体が参加に前向きと報じられています。
登録には2種類あります。ひとつは「ベーシック登録」です。要件はなく、アプリで関心のある自治体を選べば登録できます。登録すると、その地域の情報が届くようになります。
もうひとつは「プレミアム登録」です。年3回以上、自治体が指定する地域の担い手としての活動をすることが基本の要件です。こちらは、地域を訪れるときの交通費や宿泊費の補助、公共施設を住民並みの料金で使えることなどが想定されています。
背景には「関係人口」という考え方があります。住んではいないものの、その地域と継続的に関わる人のことです。人口が減る中で、こうした人を目に見える形にして、地域の担い手を確保しようというのが制度の狙いです。
住民税の払い先は変わりません
まず気になるのは、住民税がどうなるかです。
構想の初期には、住民税を複数の自治体に分けて納める案も議論されていました。年の1割を別の町で過ごすなら、住民税の1割をその町にという発想です。
しかし総務省は検討の結果、税の分割は理屈の上でハードルが高いと判断したようです。税は目に見えるサービスの対価というだけでなく、その地域の住民としての責任とも結びついているという考え方です。
結果として、登録しても住民税の払い先は変わりません。これまでどおり、その年の1月1日時点で住所がある市区町村に納めます。
分割納税が実現すれば住民税の仕組みが根本から変わると身構えていた一方で、住所を基準にする今の仕組みを崩すことの難しさを考えると、妥当な判断だと感じています。
なお、別の町に家を持つ二地域居住の人は、制度とは関係なく、すでにその町と税でつながっています。住所がない町でも、家屋を持っていれば住民税の均等割(定額で課される部分)がかかります。固定資産税もその町に納めます。
税との接点は「ふるさと納税」の返礼品
税との接点が具体的に出てきているのは、ふるさと納税の側です。
ふるさと納税の返礼品は、原則としてその地域の産品に限られています。これに対し総務省は、令和9年度の地方税制改正の要望として、プレミアム登録者に限り、登録先の自治体を訪れるための航空券などを単独で返礼品にできるよう見直しを求めています。
担い手として通う人にとって、大きな負担のひとつが交通費です。その負担を、寄附のお礼という形で軽くしようという趣旨です。
ただ、これはあくまで要望の段階です。認められるかどうかは、例年12月ごろにまとまる税制改正の方針で決まります。現時点では確定していません。
補助を受けた側の課税関係はまだ見えません
もうひとつ気になるのが、プレミアム登録者が受ける交通費や宿泊費の補助です。
一般に、実際にかかった費用の範囲で補助を受けるだけであれば、所得税の問題が生じることは多くないと考えられます。もうけが出ていないからです。
一方で、定額で支給される場合や、実費を超える部分がある場合は、考え方が変わる可能性があります。補助の具体的な中身は自治体の判断に委ねられていて、現時点では見えていません。各地の仕組みが出そろってから、確認が必要な点です。
ベーシック登録だけであれば、税金への影響は今のところ見当たりません。登録したからといって、何かの申告が必要になるわけでもありません。
