事前確定届出給与の届出書に、賞与以外の役員報酬まで書かせるのはなぜか

法人税

事前確定届出給与の届出をするとき、届出書の本体とあわせて付表を作ります。金銭で支給する場合は付表1です。

この付表は左右に分かれています。左が「事前確定届出給与に関する事項」、右が「事前確定届出給与以外の給与に関する事項」です。つまり、届け出る賞与そのものだけでなく、同じ役員に支払う月々の役員報酬まで書くことになります。記載要領は、この欄について、対象となる役員に支給した、または支給しようとする事前確定届出給与以外の給与の支給時期と支給額を、届出の時において予定されている内容で記載するよう求めています。

法人税法施行規則第22条の3第2項第8号が、届出の記載事項として、職務執行期間内の日が属する会計期間に事前確定届出給与とそれ以外の給与とを支給する場合における、その以外の給与の支給時期と各支給時期における支給額を挙げています。省令が正面から要求している事項です。

その給与が「事前確定届出給与」かどうかは、他の給与を見ないと決まらない

理由を考えるうえで手がかりになるのが、法人税法第34条第1項第2号の定義そのものです。事前確定届出給与は、所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定めに基づいて支給する給与のうち、定期同額給与および業績連動給与のいずれにも該当しないものと定義されています。

「いずれにも該当しないもの」という書き方に注目すると、その支給単独では要件の判定が完結しないことが分かります。同じ役員に対する給与の支給パターン全体を見なければ、届け出た支給が定期同額給与に当たらないと言い切れません。

届出の要否そのものにも関係します。定期給与を受けていない役員に毎年継続して支給する給与、たとえば非常勤役員に四半期ごとに支給する給与についても届出が必要ですが、同族会社に該当しない法人が定期給与を支給しない役員に対して支給する金銭の給与については、届出は不要とされています。定期給与があるかないかで結論が変わる以上、月々の支給状況は書かせざるを得ません。

「不相当に高額」の判定は年間の総額で行われる

これは私見です。法人税法第34条第2項は、役員給与のうち不相当に高額な部分を損金不算入とします。この判定は、その役員の職務内容や法人の収益状況などと比べて行うもので、当然ながら年間の給与総額が出発点になります。

届出書に賞与部分だけが書かれていると、その役員の年間報酬の全体像が分かりません。月額報酬と賞与を並べて記載させれば、一枚で総額が見えます。届出を受け取る側の立場に立てば、そこを書かせたい理由は理解できます。

もっとも、この趣旨について国税庁が明示的に説明した文書は、今回確認した範囲では見当たりませんでした。制度の建て付けから逆算した推測にとどまります。

二つの欄は、書かせている意味が違う

記載要領を読み比べると、左右の欄の性格の差が見えてきます。

左側の事前確定届出給与の欄は、株主総会等で決めた「定め」の内容そのものです。ここに書いた支給時期と支給額どおりに支給しなければ、その給与は事前確定届出給与に該当しません。

これに対して右側は、届出の時において予定されている支給時期および支給額を書く欄です。あくまで届出時点の見込みを書くよう指示されています。期中に正当な事由で月額報酬が改定されて実績とずれたとしても、それだけで記載が誤りになるわけではない、という読み方が自然かと思います。

記載誤りに気づいたときの考え方

左側、つまり事前確定届出給与の支給時期や支給額に誤りがあったまま届出期限を迎えると、原則として実際の支給を届出と違う内容にすることはできません。届出どおりに支給しなければ、その給与は事前確定届出給与に該当しなくなります。

では右側の欄に誤りがあった場合はどうか。

まず、届出期限前に気づいたのであれば、正しい内容の届出書を出し直すのが確実です。判断に迷う余地がありません。

期限後に気づいた場合は、整理して考える必要があります。損金算入の実体要件は、あくまで「定め」の内容どおりに支給したかどうかです。右側の欄は届出の記載事項ではありますが、その役員に支給する事前確定届出給与の内容そのものではありません。国税庁の質疑応答事例も、事前確定届出給与は個々の役員に係る給与について規定したものであり、ある役員への支給が届出と異なっていても、他の役員への給与が損金不算入になることはないとしています。損金算入の可否は役員ごとに切り分けて判定される、という考え方です。

この構造からすると、右側の欄の記載誤りだけを理由に賞与の損金算入が直ちに否定される、とは考えにくいところです。ただし、記載事項である以上、届出として不備があるという指摘の余地が理論上残ることは否定できません。この点についても、明確な公式見解は見当たりませんでした。

実務としては、誤りに気づいた時点で所轄税務署に事情を伝え、正しい内容を記載したものと差し替えておくのが穏当だと思います。あわせて、誤りの内容といつ気づいたか、どう対応したかを社内に記録として残しておくと、後日の説明がしやすいと思います。

なお、届出後に「定め」の内容そのものを変更する場合は、変更届出書という別の手続が用意されています。ただしこれは、役員の職制上の地位の変更などの臨時改定事由や業績悪化改定事由がある場合の制度であり、記載ミスの訂正のための手続ではありません。ここを混同すると、かえって話がややこしくなります。

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