法人税法と所得税法、条文の前提の違い

税金全般

体系的な学習が必要だとわかっていながら、日々の実務に追われてなかなか手が出ない。そんな反省もあって、税務関係の専門書をときどき無目的に読むようにしています。

先日、法人税法と所得税法を横並びで眺めていて、ふと気になることに気づきました。

法人税法の条文には、「会社は利益を追求する存在だ」という前提が通底している感じがある。一方、所得税法の条文にはそういう含みがまったくない。

条文から滲み出てくる「想定されている納税者像」が、両者でかなり異なるように感じました。

国税職員時代には意識しなかった

私は国税職員時代、ほぼ一貫して法人課税の畑を歩んできました。他の税目の条文をじっくり読む機会はありませんでした。これは国税職員の働き方の良くないところかもしれません。全税目横断的な理解をする機会がない。

だからこそ、今になって所得税法を読んで「あれ、雰囲気が違うな」と感じたのかもしれません。

Xでのやり取りで整理された

そのことをXにポストしたところ、司法修習生の方からコメントをいただきました。

内容はこうです。個人は「所得を得ようとする活動」と「消費活動」の双方を行う。しかし法人は基本的に消費活動を行わず、すべてが営利目的と考えられている。そのような納税義務者の性質の違いが、両税法の条文の差に表れているのではないか、と。

これは腑に落ちました。

法人税法が「利益追求を前提とした存在」に向けて書かれているとすれば、条文のそこかしこにその発想が滲み出てくる。対して個人は、利益を動機としない行動も当然に行う。所得税法は、そういう存在を対象として書かれているわけです。

相続税法はどう位置づけるか

ではほかの税法はどうか。少し気になって相続税法を見てみました。

相続税法第9条の前段規定(みなし贈与)を読んだ範囲では、「個人は必ずしも利益が行動の原動力ではない」というテーゼは、読み取りにくいように感じました。

相続や贈与は、経済合理性とは切り離された場面で発生することが多い。それでも条文の書きぶりは、むしろ法人税法に近い「経済的利益の移転」という発想に基づいているように見えます。

これをどう理解するか。相続税法は財産の移転に着目した税であり、行為者の動機よりも「経済的利益が移ったかどうか」という客観的事実を捉えようとしている。そのために、所得税法とは異なる書きぶりになっているのかもしれません。ただ、これはまだ私の中で整理しきれていない部分です。

アカデミック(?)に税法を眺めることの意味

実務をやっていると、条文は「答えを導くためのツール」になりがちです。この場合はどうか、この取引はどう扱うか。そういう読み方をしている時間がほとんどです。

専門書を無目的に読むと、そういう実務的な問いから離れて、「なぜこう書かれているのか」という根っこの問いが自然と浮かんでくる。そこに、普段の調べ方では気づかない発見があることを、今回改めて感じました。

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