6月は、3月決算の各種団体の定時総会が開かれる時期です。総会まわりの実務を担当している方は、忙しい頃かと思います。そんな中、東京税理士会の定時総会の案内が届きました。中を確認していると、事業承継のマッチングサイト「担い手探しナビ」の概要も一緒に入っていました。名前は聞いたことがありましたが、きちんと調べたことはありませんでした。
担い手探しナビとは何か
日税連が運営している、事業承継のためのマッチングサイトです。2018年10月に始まりました。後継者がいない中小企業について、その会社をよく知っている顧問税理士が中心になり、引き継ぎ先を探すことを目的としています。
使えるのは税理士だけです。一般の経営者や仲介業者は閲覧できません。利用するには、所属している税理士会のホームページから申請します。
サイトでできることは、大きく三つです。関与先の承諾を得たうえで、売り案件・買い案件を登録すること。掲載されている案件から関与先の引き継ぎ先を探すこと。気になった案件について、掲載した税理士に問い合わせてやり取りすること。売り側だけでなく、顧問先が他社を引き継ぎたいという買い側の登録もできます。
ふつうのM&A仲介サイトと何が違うのか
一番の違いは、仲介業者が間に入らない点です。税理士自身が、当事者の相談役として動きます。業者が双方をつないで手数料を取る、という形ではありません。
公開される情報の出し方にも特徴があります。売り案件であっても、会社名がそのまま載るわけではありません。地域・業種・売上・従業員数といった、会社が特定できない範囲の情報だけが公開される仕組みになっています。
加えて、案件を掲載した税理士の所属税理士会名・事務所名・氏名が必ず表示されます。出どころのわからない案件よりは、相手が見えるぶん信頼しやすい、という見方ができます。
価格の交渉や企業価値の算定など、専門的な支援が必要になった場面では、税理士会の連携先に相談できる受け皿も用意されています。こちらは内容に応じて費用がかかります。
とりあえず登録しておくべきか
登録自体の負担はほとんどないので選択肢として持っておく価値はある、ただし登録しただけで案件が来るものではない、という性格のものだと感じています。
理由はいくつかあります。まず、登録のハードルが低いことです。所属税理士会への申請だけで使えます。一般に、サイトの利用や案件の登録に会費以外の費用はかかりません。維持の手間もほとんどないため、まず中をのぞいて、どんな案件が動いているのか相場観をつかむ、という使い方ができます。
次に、効果が出るかどうかは顧問先の顔ぶれ次第だということです。開業して間もない時期は、後継者不在で売却を考えている関与先や、逆に他社を買いたいという関与先が、手元にどれだけいるかで出番が決まります。今すぐ具体的な案件がないのであれば、将来そういう相談が来たときに使える道具を知っておく、という位置づけになります。
もう一つ気になったのは、自分の関与の仕方を先に整理しておく必要がある点です。このサイトは、税理士が仲介ではなくアドバイザー役として動く前提です。成約まで導くとなると、企業価値の算定や交渉、契約面の支援など、ふだんの顧問業務とは違う知識と労力が必要になります。どこまで自分で担い、どこから外部に頼るのか。案件が来る前に一度考えておくほうが、いざというときに動きやすいはずです。
今の自分には、すぐ使う場面がないため、登録はしていません。それでも、業界の事業承継インフラがどうなっているのかを低い負担で知っておけるのは、悪くないと思っています。

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