桃太郎電鉄、通称「桃鉄」は、長く続いているすごろく型のTVゲームです。プレイヤーは鉄道会社の社長になり、サイコロを振って全国の駅を回ります。
ただ、遊んでみると、電車を走らせて運賃を稼ぐ場面はほとんどありません。中心になるのは、止まった駅で物件を買うことです。駅ごとに飲食店や工場、観光施設などの物件があり、それを買い集めていきます。
電鉄会社の中から、不動産事業部だけを切り出したゲームと言うと、イメージしやすいかもしれません。
小学生のころ、腑に落ちなかったこと
桃鉄には「総資産」という数字があります。一般に、手元のお金と、持っている物件の価格を合計したものです。最終的な順位も、多くの場合この数字で決まります。
小学生のころ、この数字がどのように作られているのかがよく分かりませんでした。10億円の物件を買えば、手元のお金は10億円減ります。それなのに、買った直後に総資産を見ても減っていません。
お金を払ったのに、財産は減っていない。払ったお金はどこへ行ったのか。当時は画面を見ながら、ずっと不思議に思っていました。
お金が物件に振り替わっただけ
物件を買うと、現金という資産が減り、物件という資産が同じ額だけ増えます。資産の中身が入れ替わっただけなので、合計は変わりません。
簿記の言葉でいえば、現預金が固定資産に振り替わった、ということです。
財産が減るのは、お金が出ていき、代わりに何も残らないときです。桃鉄でいうと赤マスに止まることがその典型です。物件の購入は、払ったお金の代わりに物件が残ります。だから総資産は減りません。
桃鉄の物件には「収益率」が決まっていて、年に一度の決算で、購入価格に収益率を掛けた額が入ってきます。手元に置いたままの現金は、何も生みません。
収益率がプラスの物件なら、買った時点では総資産は変わらず、決算のたびに増えていきます。手元のお金に余裕があるうちは、物件を買うことは基本的にプラスに働きます。
損をするのは売らされるときなど
では、桃鉄で物件が損につながるのはどんな場面か。多くの場合、手元のお金がマイナスになったときです。
所持金がマイナスになると、物件を手放してお金を作らなければなりません。このときの売値は、多くの作品では購入価格の半値です。10億円で買った物件は、5億円にしかなりません。差額の5億円は、ここで初めて総資産から消えます。
買ったときには減らなかった総資産が、売らされたときに減る。損は、買った瞬間ではなく、手放さざるを得なくなった瞬間に確定します。
私は、ここが桃鉄のいちばん現実に近い部分だと感じています。会社でも、帳簿の上では利益が出ているのに、支払いに回すお金が尽きることがあります。そうなると、資産を安く手放したり、事業を続けられなくなったり、黒字倒産することだってあります。
ゲームと現実で違うところ
もちろん、桃鉄と現実の簿記は同じではありません。
実際の会計では、建物は年月とともに価値が減っていくものとして扱います。取得価額を、使う年数に分けて少しずつ費用にしていくのが減価償却という手続きです。桃鉄の物件は、減価償却という概念は無く、基本的に買ったときの価格のまま総資産に数えられます。
売り方も違います。桃鉄では、買った物件を自分の判断で売ることは、基本的にできません。手放すのは、所持金がマイナスになり、物件を売らされる場面にほぼ限られます。
現実の不動産には、その時々の相場があります。買値より高く売れるときもあれば、安くしか売れないときもあります。持ち主は、相場を見ながら売る時期を選べます。
桃鉄には、基本的にこうした相場の考え方がありません。物件で稼ぐ方法は、持ち続けて決算ごとの収益を積み上げることに絞られています。キャピタルゲインではなく、インカムゲインをどれだけ大きくするかを競うゲームだといえます。
それでも、「買っただけでは財産は減らない」「損は、お金が足りなくなって手放すときに出やすい」という骨格は、現実にも則しているように感じます。
