法人の税務調査は、法人税・消費税・源泉所得税の三つを同時に見るのが基本です。事前通知にもこの三つが並びます。
ただ、実際の調査ではもう一つ、印紙税が確認されます。契約書や領収書、金銭消費貸借契約書といった紙の書類を提示したときに、調査官が印紙の有無と金額を見ていく場面です。三税同時調査という枠組みの外側で、事実上のチェックが入ることになります。
税務署では、印紙税の事務も法人課税部門が担当しています。法人税の調査に出る職員と印紙税を所管する職員が同じ部門にいるため、調査の場でそのまま印紙の話になる、という流れです。
税理士は印紙税の代理ができない
意外に思われるかもしれませんが、税理士は印紙税について税務代理ができません。税理士法第二条第一項は、税理士が扱う租税から印紙税を明文で除いています。登録免許税、自動車重量税、関税なども同じ扱いです。
税理士試験の科目にも印紙税はありません。たばこ税、揮発油税、地方揮発油税、石油ガス税、石油石炭税、国際観光旅客税も同様です。試験科目は法律で限定されており、これらは入っていません。
つまり印紙税は、資格試験でも業務範囲でも正面から扱われていない税目です。それでいて調査の現場では話題に上ります。同席していても代理人としては動けない立場にもどかしさを感じます。
貼り漏れが見つかったときの流れ
貼り漏れが見つかった場合、原則は重い扱いです。印紙による納付が必要な文書について、作成の時までに納付しなかったときは、納付しなかった印紙税額とその2倍の合計、つまり3倍相当の過怠税を徴収されます。貼った印紙を所定の方法で消していなかった場合も、その額面相当の過怠税が生じます。
一方、作成者が所轄税務署長に対して納付していない旨を申し出た場合で、その申出が印紙税の調査によって三倍の過怠税の決定があると見込んでされたものでないときは、印紙税額とその1割の合計、つまり1.1倍に軽減されます。
実務では、調査の際に貼り漏れを指摘されると、不納付事実の申出書を提出するよう促されるのが一般的です。申出書に課税文書の種類や金額などを記載して提出し、後日、一割分を含めた金額を税務署に納めます。
このとき、漏れていた書類にあらためて収入印紙を貼る必要はありません。納付は申出書と納付書で完結します。過去の書類を引っ張り出して貼り直す作業は発生しません。
なお、過怠税は全額が法人税の損金や所得税の必要経費になりません。1.1倍に収まったとしても、税負担としては効いてきます。
電子取引の時代に残るもの
印紙税は、あくまで紙の文書に対して課される税金です。同じ内容の契約でも、電子データでやり取りすれば課税文書は作成されません。電子契約が広がるほど、印紙税の出番は自然に減っていきます。
その意味で、文書という形式に着目して課税する仕組みは、時代に合わなくなってきていると感じます。それでも、紙の契約書や領収書が完全になくなったわけではありません。調査官によっては、書類を一枚ずつ丁寧に確認していく方もいるという印象です。
税務代理はできなくても、社内でどの書類に印紙が必要かを整理しておくことは可能です。税務調査の際に慌てないためにも、印紙税も確認対象になり得ることを念頭に置き、課税文書を事前に整理しておくとよいと思います。
