日税連のAIガイドライン、ひとり税理士でも「確認する側」になり得る話

税理士独立

2026年9月30日、日本税理士会連合会が「税理士事務所のためのAI・クラウド活用ガイドライン」を公表しました。税理士がAIやクラウドサービスを業務で使うときの考え方と手順をまとめたものです。

会員専用ページでの公表ですので、中身の解説はしません。ここでは、私の立場で読んだときに、どこが自分に関わってくるかを備忘までに書き記します。

私はひとりで事務所をやっていますが、税理士法人から業務の委託も受けています。読んでみると、この二つの立場で、ガイドラインとの関わり方がかなり違いました。

自分の事務所では、全部自分の担当

ガイドラインには、職員がいることを前提にした記述が多くあります。職員が申請して責任者が承認する。研修を受けてもらう。役割を分けて互いに確認する。

ひとり事務所では、これらがすべて一人に集まります。申請するのも承認するのも自分です。止める人がいません。

どのツールに、どの種類の情報までなら入れてよいか。落ち着いているときに決めて書き留めておくことが、ひとり事務所では規程の役割を果たすと思っています。

顧問契約書の同意で足りるか

私は、顧問契約書にAI等の利用に関する条項を入れ、顧問先から同意をもらっています。

ただ、この同意で足りる範囲には限りがあります。

顧問先の同意は、一般に、税理士の守秘義務との関係で意味を持ちます。守るべき秘密が、顧問先の秘密だからです。

一方、給与計算などでは、顧問先の従業員の情報も扱います。従業員の氏名や給与額は個人情報で、こちらは個人情報保護法の問題です。この法律でいう「本人」は、顧問先ではなく従業員一人ひとりです。顧問先から同意をもらっても、従業員本人の同意にはなりません。

つまり、一つの資料に二つの法律が同時に関わっています。従業員全員から同意を取るのは現実的ではないため、別の手当てが要ります。その中身はガイドラインに譲ります。ここで押さえておきたいのは、契約書の条項だけですべてが片付くわけではないということです。

業務委託先では「確認する税理士」の立場

もう一つの立場が、税理士法人からの業務委託です。

委託元の税理士法人は、多くの場合、このガイドラインを踏まえて運用を整えていくと想定されます。

たとえば、税理士資格のない事務員さんが生成AIを使って顧問先への回答案を作り、それを私が確認するという場面です。

税務の相談に答えることは、税理士でなければできない業務です。資格のない人がAIの出力をそのまま顧問先に渡すと、この業務を行ったことになりかねません。そのため、確認するのは「人」であるだけでは足りず、「税理士」でなければならないというのがガイドラインの考え方です。

この場面では、その税理士が私です。

また、どのツールに何を入力してよいかは、委託元のルールに従います。自分の事務所のルールとは別に、もう一つのルールを把握しておく必要があります。

他人がAIで作った下書きを確認するということ

自分でAIを使うときは、何を聞き、どんな答えが返り、どこを直したかが分かっています。

他人がAIで作った下書きを確認するときは、そこが見えません。どんな情報を入れ、どう指示し、最初の答えをどう手直ししたのか。手元に届くのは、完成した文章だけです。

AIの文章は、一般に整っていて読みやすいものです。誤りがあっても、文面からは気づきにくいことがあります。

そこで、回答案には根拠となる条文や通達を添えてもらうと、確認がしやすくなります。文面ではなく、根拠を起点に確かめられるからです。

ただし、見るべきは条文の当てはめだけではありません。事務員さんが顧問先の状況をどう要約してAIに伝えたかで、答えの前提が変わります。事実関係の受け取り方がずれていれば、条文の引用が正確でも回答はずれます。回答案だけでなく、顧問先からの元の質問も並べて見る必要があります。

自分のAIの使い方を点検することと、他人のAIの使い方を前提に確認することは、似ているようで別の作業です。個人的には、後者のほうがどこまで疑ってかかるべきか迷う場面が多くなりそうだと感じています。

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